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「正解のないところに答えを見出す」社労士・関口克己が目指す道

撮影:スタッフO

「PLUG IN│Editorial」はメディアと小売に軸足を置く2社が共同で主催している展示会だ。メディアは繊研新聞社、小売はCREDITSである。展示会ではビジネスの話しがしっかりとできる環境づくりを心がけている。同時に、展示会の出展に付随したさまざまなサポートプログラムを充実させている。なかでも専門家の紹介は出展者のニーズが高い。
今回はPLUG INが提携している専門家の一人で労務まわりのプロフェッショナル、社会保険労務士の関口克己さんにインタビューした。関口さんはどんな先生なのか?社労士の仕事とは?時折脱線しながら話しを聞いた。

text by 事務局スタッフO

「士業を志したきっかけ?前に話したことあったと思うんだけど、大学を卒業して司法試験を受けていたんですよ。で、アホみたいに長く勉強していて。大学卒業してから30くらいまでかな。で、どうにもならん、自分の人生どうなっちゃうんだろうと」

関口先生は社会保険労務士以外にも複数の資格を保有していることを知っていたので、インタビューの冒頭で士業に就いた経緯を訊いてみた。場所は事務所がある東京・笹塚のビルの10階。窓の外には中野の高層ビルが見える。

「当時、講師のバイトしていた資格予備校には(法曹界で出世して)後に検事正になるような、そんな人間がごろごろしていたんですよ。今でも覚えているんだけど、同じ予備校で講師のバイトやっていた二回りくらい下の人間と喫煙所でタバコを吸っていて、彼が『関口さん、社労士って受けないんですか』って言ってきたんです」

「渋谷区 社労士」のキーワードで検索エンジンの上位に表示されるほど、長年に渡り信頼と実績を積み重ねている関口先生だが、実はこのとき社労士の存在すら知らなかったという。

「まったく知らなかった。でも、まあちょっと受けてみるか、みたいな(笑い)。じゃあ願書もらっておきますよ、っていう軽いノリ。で、試験勉強してみると、ほんとにつまらない(笑い)。今までやってきた資格の試験で一番つまらない」

1回目の挑戦では勉強時間がほとんど取れなかったから駄目だったものの、2回目の挑戦で合格を果たす。その前年に合格していた行政書士と社労士の2つの資格を合わせて、独立を考え出す。ちょうどそのタイミングで廃業する事務所を引き継がないかというオファーが舞い込んだ。

「無謀以外の何ものでもない、何も知らない人間が看板を掲げるんだよ(笑い)。その先生は、すでに税理士と社労士の人にも事務所のスペースを提供していて、自分は3人目で入ったのかな。当時、行政書士はいなかったから、行政書士の業務は全部自分が引き継がせてもらった」

独立したのは平成21年。渋谷の明治通り沿いのビルに他の士業が何人か集まった事務所で開業した。初めから何社か顧問先がある状態でのスタートだった。やがて、たくさんの資格を取得することになっていった。

「法律の知識があるからね。宅建(宅地建物取引士)も。マンション管理士もあるかな。似たような資格の管理業務主任者は法律系だけじゃなくて、建設の知識がないと合格に至らないので苦労した。建設の知識については予備校に通って勉強した。今、CFPは4科目目をクリアーしていて、来年、全科目合格を目指そうとしている(インタビューは2022年10月)。その前に、第一種衛生管理者試験も受けようと思っている」

この日が下ろしたてだというブルーのシャツにはK.SEKIGUCHIの刺繍が。関口先生はお洒落だ。

「人によっては資格マニアですかって言われることもある。ま、言われても仕方ないんだけど、(試験勉強を)やることで仕事に幅ができ可能性が拡がると思う。CFPも介護保険の知識や老後の生活に繋がっている。(これらは)まったく無関係でいられる人はいない。たとえば、退職後の生活のセミナーができれば形になるかな、と」

勉強法なんてないですよ、と笑いながら、最近合格した第二種衛生管理者のテキストを広げて見せてくれた。鉛筆でびっしりと書き込みがあった。

社労士という仕事の魅力を訊いた。

「社労士ってもともと10年ほど前は、社会保険、労働保険の手続がメインだったと思うんだけど、いまや電子申請が当たり前になって、しかも会社の内部でそんなに難しくないという認知が広がりつつあるので、手続の仕事をやっていくというのはどんどん減っていくだろうと。言い方は悪いけど、高卒で会社に入ってきた人だって、慣れればできるようになる。そこに士業だからどうのこうのはあんまり関係ない。今は『人に対する問題』の方に重点が移行しつつあるので、社労士が生きる道もそっちにあると思っている。だからそっちのほうを掘り下げていかなければ生き残れないし、選ばれないと思っている」

社労士という士業の現状と今後を一気に語った関口先生は、仕事するうえでの自分のキーワードを教えてくれた。

「『正解のないところに答えを見出す』っていうのを仕事するうえでのキーワードにしていて。経験だったり、勉強して得た知識だったり、いろんなところから吸収してきたものを頭のなかで考えて、答えをひねり出す。それが士業が生き残る道だと思うし、仕事していて面白いし、全く退屈しない」

労務問題では会社側の目線と労働者側の目線、両者が対立する場面も。

「我々ができるのは予防法。揉めごとにならないためにどうするか。弁護士で労務問題の予防をやっている人はあんまりいない。弁護士さんは(基本的に紛争が生じた後の)トラブルシューターなので」

関口先生は労働審判になったエピソードを話してくれた。最終的に弁護士を紹介することになり、多額の解決金を支払うことになった。紛争に至る前の予防に力を入れていたら、別の展開があっただろう。

「業界ごとの特徴?そりゃありますよ」

あの業界はこうだ、別の業界はこうだ。ここには書けない裏話をくわしく教えてくれた。

「オフレコが多くてインタビュー、大丈夫?(笑い)」

話しは脱線しつつ、いつしか話題は認知症に移っていた。

「好奇心とフットワークだと思うね。好奇心があると、見てみたい、聞いてみたい、何々してみたい、とか。そういう人はいきいきしていて長生きするよね。人との接点を求めて歩く。うん、好奇心とフットワークが大事かな。最近、常々思う」

趣味は食べることと渓流釣り。東京・あきる野市の養沢に行くことが多い。釣った川魚は持って帰って、燻製にする。釣りをしているときは無心になる。ときに10時間ほど。バランスを保つためには絶対に必要な時間だという。

「目指すところは『働きやすい職場』を顧問先と一緒につくること。『働きやすい職場』っていろんな意味がある。そのいろんな意味を実践するために何が必要なのか、を提言している」

従業員同士が互いの良いところを評価し合う「サンクスカード」という仕組みを顧問先に提言したことがある。経営者には見えづらい現場レベルの助け合いを金一封で報いようというものだ。経営者にも従業員にも喜ばれた。

「私の目指すところは、会社によって(抱えている)いろんな要素があって、その中で、考えて、答えを出して、提案するってこと。それが、社労士が今後生きる道なのかな、と思う」

豊かな法律の知識が土台となり、社労士と行政書士の2つの資格が幹となっている。そして、複数の資格が枝を広げている。

「こんなの作ったんだよ」。インタビューが終わったあとに見せてくれたのはメンタル不調者の休職から復帰までの労務管理上のポイントをフローチャートでまとめた資料。顧問先にとってわかりやすいように、と独自で作ったものだ。

関口先生はどこかセンセイらしからぬ軽妙さがあって、それでいてとても真摯。そして親身。

ファッション業界と相性が良い先生だと思った。

撮影:スタッフY

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